パースや背景を学び始めると、必ずと言っていいほど「アイレベル(EL)」という言葉が出てきます。
よく技法書なんかで説明される絵では、横線に水平に書かれることが多いですが、この「アイレベルというのが何なのか?」イマイチ理解できない人も多いと思います。
当の私も、コマや画面のどこにこのアイレベルを置いたら良いのか?というのが以前までわからなかったのですが、最近やっとピンとくる答えが出たので今回ここにまとめていきたいと思います。
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Contents
アイレベルとは何?
アイレベルとは「地面から目線までどのくらいの高さがあるか?」を表しています。
「目の高さ」「目線の高さ」と説明されることもありますが、要は足元から目線までどのくらいの高さがあるか?ということを表したのが「アイレベル」なんですね。
例として上の図の人物の目線が地面から150cmであれば、この人物のアイレベルは150cmとなります。
理解しやすくするためには、アイレベルを「自分自身の目の高さ」と捉えるとわかりやすいです。
たとえば、自分が見ている視点から下のものは見下ろすカタチになります。(物体の上側が見える)
これというのは自分が上から見ているからであって、つまりはアイレベルは物体の上にあります。
逆に、自分の視点より上にあるものは見上げるカタチになります。(物体の裏側が見える)
これは自分が下から見ているからなので、アイレベルは物体の下にあるということになります。
今すぐに自分の視点からこのアイレベルというのは確認できます。あなたの目線より下にあるものは上側が見え、目線より上にあるものは裏側が見えますよね?
こうしてアイレベルを「自分自身の目の高さを画面に表したもの」と意識すれば、「目線より絶対に上に来ないもの」というのもわかるようになります。
たとえば、地面に走っている道。地面が人間の目より上になることは普通ないので、道というのは必ずアイレベルより下になります。
こうはなりませんよね。↓(^_^;)
もちろん歩道橋とか、坂の上の道とか目線の上になる道もありますが、自分が立っている地面に面した道がアイレベルより上になることはまずないです。
同じようにして、家というのも地面の上に建てるものなので、下側は必ずアイレベルより下になります。
下側がアイレベルより上になると、「浮かんでいる家」になってしまいます…。(´・ω・`)
先ほど説明したように、アイレベルより上にあるものは裏側が見えるので、まず家の場合はありえないですよね。(^^;)
たとえば「崖の上に立っている家を見ている」、ということであれば家の下側がアイレベルより上になることもありますが、自分が立っている地面に面した家の下側がアイレベルより上になることはないです。
アイレベルを使えば自由にキャラクターを配置できる
アイレベルに関して説明したところで、絶対に覚えておいて損はない知識を紹介します。
アイレベルの上に消失点(パースのラインが集まる線)を置いたら、ひとり人物を配置してみてください。
↑の図の人物が160cmだったとして、消失点から頭頂~つま先を結ぶ線を2本引きます。
こうすると、消失点までのラインが生まれますよね。
実はこのライン上では、全く同じ身長の人物を置くことが出来ます。
上の図では、ちょうどアイレベルのところに人物の股部分が来ていますね。
より細かく消失点からラインを引いてみると、同じ身長・同じプロポーションの人物は、こういったパーツの位置も同じラインの上に来ます。
ちょっと線が増えて見づらいんですが;、黄色い線で首・胸・膝とラインを引いてみましたが、同じラインのところに同じパーツが来てますよね。
あとは横にずらしたりしてあげれば、好きな位置に配置可能です。
一人キャラクターを置いてあげれば、その人物をものさしにすることができます。
たとえば上の人物は160cmとしていましたが、それより身長が高い人物をいっしょに置きたいなら、ちょっと高さを足してあげればいいわけです。
背景なんかも人物と対比しておかしくない高さで配置すればいいので、まずは基準となる人物をひとり置くと描きやすくなりますよ。
アイレベルの見つけ方・高さの調べ方
以下、消失点の記事でも使用した画像です。
写真からアイレベルがどこにあるかを探す場合は、まず真っ直ぐなものを探してから何本か線(パースライン)を引いてみると、一点にぶつかる箇所が出てきます。
これが画面の消失点と言って、アイレベルは基本的にこの消失点上に引かれることになります。
なので写真からアイレベルを探したいときは、まずパースラインをひいて消失点を見つけることで、導き出すことができます。
なおアイレベルの高さなのですが、↑の写真のような立っている人の目線の構図の場合、だいたい150~160cmくらいであることが多いと思います。
この写真は身長160cmの私がカメラを目元に当てて撮った写真のため、アイレベルの高さは150cm程度と思っておいて大丈夫です。
ご自身で同じように写真を撮る(カメラを目元に当てて撮る場合)ときは、大体ご自分の身長から-10cmくらいがアイレベルの高さです。
人間の頭のタテの高さ(頭のてっぺんからアゴの先まで)は、平均で男性が約23cm、女性が約22cmほどと言われており、目はほぼ顔の中心にあります。
なので身長から10cmほどを引けばアイレベルの高さがわかるということですね。
三脚を使って写真を撮るときは、できればメジャーなどを使い、地面からレンズまでの高さを測れるとより正確なアイレベルの高さがわかるかなと思います。(めんどくさいですが。汗)
これは私が使っている方法ですが、もし自分で写真を撮って背景を書くときは、ひとつの方法として試してみてください。
モノのサイズからもアイレベルの高さがわかる
以下はフリー画像サイト様からもってきた室内の写真ですが、このように自分が撮ったものでない場合は、家具などからおおよそのアイレベルの高さを導き出せます。
先ほどと同じように、パースラインを引いて消失点を見つけ、アイレベルを引きます。
自分が撮ったものでないとアイレベルは分かりづらいかもしれませんが、大体家具やドアなどといったものはある程度目安となるサイズがあります。
たとえばテーブルであれば高さ70cm前後が一般的なので、画像にあるテーブルもその程度だと考えてみます。
消失点までのテーブルの高さは、半分よりちょっと高いくらいですね。
なので、この画像のアイレベルはだいたい140cmより低いくらいになるのかな?と予想できますよね。(^^)
アイレベルがわかっちゃえば他のものの高さもわかるようになります。
例えば手前のソファはアイレベルの2/3くらいなので、90cm前後になりそうですね。
サイズに関しては、家具であれば家具屋さんのサイトに寸法が詳しく書いてあったりしますし、自分の家のモノのサイズを測ってみてもいいと思います。
また以下の「一生使えるサイズ事典住宅のリアル寸法 完全版」のように、モノのサイズに特化した書籍も売っています。こういうのが一冊あると背景を書くときかなり役立ちますよ。
アイレベルはどこに設定すればいいの?【室内・外】
では次に、アイレベルをどこに置いたらいいのか?ということの説明をしたいと思います。
基本的に違和感のない画面にしたい場合、室内ではアイレベルを120cmほどに設定すると良いと言われます。
なぜかというと、室内では座って過ごすことがほとんどなので、座ったときの視点の高さが120cmくらいになるからです。
そして洋室の天井の高さというのは230~240cmくらいであることが通常となっているので、それを考えると↑の図のようなアイレベルになります。
外では立ってすごすので、アイレベルは立っているときの視点150cm~160cm程度にすると自然な見え方になります。
ただ、室内でも150cm~160cmにアイレベルを置いたからっておかしく見えることはないと思いますので、面倒なら150cm~160cmに統一しても個人的にはいいと思います。
なお、ここまでの方法は背景だけでアイレベルを決める方法です。
イラストや漫画の場合、実際にはキャラと背景を同じ画面に書くことが多いと思います。
なので、この場合は基準になるキャラを一人決めて、そのキャラの目の高さや頭頂にアイレベルを置いちゃっても違和感なく画面は完成すると思います。(キャラをひとり書いてから背景を書く方法)
あとは好きな位置に消失点を決めてしまえば、簡単に違和感のない画面が出来上がります。
上記は6畳の部屋を想定して(今回はアイレベルの説明なのでサイズ感はざっくりですが汗)パースラインをひいているので、これに家具や窓、ドアなどを書いていけば部屋が完成しますよね。
アイレベルに関してある程度理解できたら、いっしょに消失点についても知っておいてください。
背景においてアイレベルと消失点はセットなので、どちらも必ず使います。